
50年間変わらなかった検診システムの限界
なぜ今、胃がん検診の変革が必要なのか?
バリウム検査が抱える構造的な問題
日本の胃がん検診は、1970年代から50年以上、バリウム検査を中心に行われてきました。現在も検診受診者の約9割がバリウム検査を受けており、年間2,000万人以上がこの検査方法に頼っています。しかし、医療技術が大きく進歩した現代において、このシステムには様々な課題が顕在化しています。
検出精度の限界
バリウム検査は、X線で胃の形を影絵のように映し出す検査です。この原理的な制約により、小さな病変や平坦な病変の検出は困難です。早期がんの多くは平坦型であり、これらを見逃すリスクが常に存在します。がん検診の最大の目的である「早期発見・早期治療」を実現する上で、この検出精度の課題は重要な改善点となっています。
放射線被曝
バリウム検査では、胃の動きを観察するためにX線を連続的に照射します。その被曝量は決して少なくありません。特に問題なのは、検診を毎年受けることによる蓄積効果です。健康を守るための検診が、逆に発がんリスクを高める可能性があるという矛盾を抱えています。
受診者の心理的・身体的負担
重金属化合物である硫酸バリウムは、検査後しっかりと体外へ排出されなければ、腸が詰まったり、最悪の場合は腸が破れたり、といった重大なトラブルとなり得ます。また、検査台で体を回転させる検査方法も、高齢者や身体の不自由な方には大きな負担となります。
検診における現行の内視鏡の課題
「バリウムではなく内視鏡を」という声は確かに高まっています。しかし、現在の内視鏡システムは、大規模な検診には適していません。
過剰な高機能化がもたらす弊害
現在の内視鏡は、精密検査用のツールとして発展を遂げ、「モンスター内視鏡」と呼ぶべき存在になっています。1本数百万円、超高解像度、特殊光観察機能、拡大観察機能など、様々な機能が搭載されています。しかし、検診で必要なのは疑わしい病変のスクリーニングであり、これらの高度な機能は必要ありません。
処理能力のボトルネック
もう一つの課題は、内視鏡の洗浄・消毒・乾燥に要する時間です。1本の内視鏡を使用後、次の受診者に使用するまでに数十分以上のダウンタイムが発生します。このため、1日に検査できる人数が限られ、大規模な検診には到底対応できないのです。
リユース内視鏡による感染リスク
現行内視鏡は繰り返し使用するリユース(再利用)方式であり、使用のたびに洗浄・消毒・乾燥が必要となります。しかし、どれほど丁寧にこれらの工程を行っても、感染リスクを完全にゼロにすることはできません。
過去には内視鏡の消毒が不充分であったため、感染による死亡事例が発生しています。がんをスクリーニングするための検診で、感染事故が発生するという事態は許容できないと考えています。
経済的なハードル
内視鏡システムの導入には、本体だけでなく洗浄機、消毒設備、専用の検査室など、多額の初期投資が必要です。さらに、複雑な操作には熟練した内視鏡医が必要で、人材育成にも時間とコストがかかります。これらの要因により、内視鏡検診を実施できる医療機関は限られているのが現状です。
エンドルミナル・ソリューションズが
提案する解決策
これらの問題に対し、当社は根本的に異なるアプローチを提案します。
検診に特化した新しい内視鏡システム
精密検査用の内視鏡をダウングレードするのではなく、検診に必要な機能だけをゼロから積み上げる「ゼロベース開発」により、世界初の検診特化型ディスポーザブル内視鏡(胃カメラ)を開発しています。世界最細径の実現により苦痛を最小化し、完全使い捨てシステムにより、使用後の洗浄・消毒・乾燥といった工程が一切不要となるため、新しい内視鏡を開封してすぐに次の検査を開始でき、待ち時間がゼロになります。内視鏡は個包装で滅菌済。感染症のリスクなく安全に使用できます。
導入しやすい価格と設備投資の軽減
現在の胃カメラ検診における個人負担額の範囲内に収まる価格設定により、受診者の経済的負担を増やすことなく、医療機関は大規模な初期投資なしで導入可能となります。タブレット接続システムの採用により、高額な内視鏡タワーも不要です。これにより、中小クリニックでも内視鏡検診への参入が可能となり、検診実施施設の裾野が大幅に広がります。
AIによる精度と効率の向上
検診に特化したAI診断支援システムにより、疑わしい病変の見逃しを防ぎます。さらに、ディスポーザブル内視鏡の特性を最大限に活用し、製造時に付与された個別IDにより、1本の内視鏡と1人の受診者の検査データが完全に1対1で対応。この確実な紐付けにより、検査履歴の管理精度が飛躍的に向上し、自治体への報告も自治体への報告書作成等も完全に自動化されます。医師の負担を軽減しながら、検診の質を向上させることが可能となるのです。
新しい時代の検診システムへ

現在、バリウム検査の課題について様々な議論がなされていますが、重要なのは実現可能な代替手段を確立することです。我々は、バリウム検査が日本の胃がん早期発見に果たしてきた歴史的役割には敬意を払いつつも、医療技術の進歩に応じた新しい検診システムを構築する時期が来ていると考えているのです。
エンドルミナル・ソリューションズ株式会社は、具体的、現実的なソリューションを提供します。日本の数千万人が受ける胃がん検診を、より安全で、より正確で、より受けやすいものに変革する。それが当社の使命です。
この変革は、単に検査方法を変えるだけではありません。日本の胃がん検診システムそのものを21世紀にふさわしい形へと進化させ、国民の健康寿命延伸に貢献する。そして、この成功モデルを世界へ展開し、グローバルな医療の向上(Universal Health Coverage)に寄与します。